選択基準はこれ!皮脂をスキンケアでコントロールする為のヒント

皮脂に悩む全ての人へ。今回は、肌に様々な影響を与える「皮脂」に着目し、エビデンスを元にスキンケアにて皮脂をコントロールする方法や、おすすめアイテムなどについて解説しています。
ななな 2024.08.14
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皮脂を抑制する成分はこれ!アイテムはこれ!

皮脂に悩む私たちは、出されたものの内容を理解する前にすぐに買ってしまう、という結果を急ぎ過ぎるが故の端的な行動により、「皮脂に良いって聞いたが実際にはあまり効果が無かった」「効いているのかどうかが分からない」という事態に陥りやすい傾向にある。

今回お届けしたい内容は、皮脂の分泌はどのようなメカニズムで盛んとなり、どのようなメカニズムを通して抑制することができるのか。皮脂が肌に及ぼす悪影響から、本当に効果のある成分・アイテムをエビデンスを元に以下の流れで解説する。

  • 皮脂の過剰分泌が肌に与える悪影響とは

  • 皮脂自体は悪では無く、問題は皮脂の質

  • スキンケアにおける皮脂抑制効果のある成分5選

  • スキンケアにおける皮脂酸化抑制効果のある成分4選

  • 皮脂をスキンケアでコントロールする為のヒント

  • 皮脂をコントロールするおすすめアイテム

  • 結論

皮脂トラブルで悩む全ての人へ。不本意な買い物を防ぐ為にはまず、皮脂を止める為のメカニズムについて把握する事から始めてほしい。(前半部分は多くの方に知ってほしいのですべての読者さまに公開しています。)

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買わなくていいもの。やらなくていいものでは、おすすめ!ばかりで溢れかえる美容情報の中で日々、取捨選択に手を焼く私たちが自分のお肌に本当に必要もの・不必要なものを棲み分け最終的に自分のお肌に合った化粧品に辿り着けるよう、自身の経験と成分知識を元に、逆に買わなくていいもの。やらなくていいこと・に焦点を当てた記事をお届けしています。

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皮脂の過剰分泌が肌に与える悪影響とは

皮脂による肌への影響は意外にも深刻で、皮膚疾患であるニキビからくすみやシワなどといった肌老化にまで深く密接に関わっていることが分かっている。

ニキビ

ニキビはいきなり出現するのではなく、ニキビを誘発させる要因である

  • 皮脂の過剰分泌による毛穴詰まり

  • 角質が毛穴内部に詰まりニキビの元となるコメド、角栓を形成

  • アクネ菌の増殖により、免疫反応にて炎症を引き起こす

という、以上の3つのメカニズムを経て、最終的にニキビへと発展する(1)。

トリガーとなる3つの要因のどれかを阻止することがニキビ予防への解決策であり、中でもアクネ菌に直接アプローチするには皮膚科で処方される抗菌薬が必須。長期的に酷くニキビが沢山出来ている状態などであれば迷うことなく第一選択は皮膚科への受診が望ましい。

また、アクネ菌が増殖してしまう原因の一つが、餌となる皮脂の過剰分泌や角栓詰まりというアクネ菌が過ごしやすい閉塞した環境にある。スキンケアでカバーできる部分といえばこの「皮脂のコントロール」である。

皮脂酸化によるくすみ・毛穴目立ち

紫外線等の影響によって、皮膚表面に老化や炎症など様々な悪影響を引き起こす「活性酸素」が発生することで皮脂が酸化。この皮脂が酸化したものを過酸化脂質と呼び、特に皮脂内でもスクワレンという成分が活性酸素と第一に結びつくことで脂質過酸化反応が起こることが分かっている(2)。

皮脂の酸化が進むと、「アクロレイン」という物質が爆誕。このアクロレインは、肌の表面にある「ケラチン」というタンパク質と結びつく(3)。これによって、肌の表面にあるタンパク質がダメージを受けて変質し、肌の保湿力が低下。肌の透明感が失われくすみが生じ、毛穴が開いたり、毛穴の周りが暗く目立つようになることも明らかとなっている。

すり鉢毛穴

出典:資生堂

出典:資生堂

資生堂の研究では、毛穴が目立つ人の肌を調べたところ、共通して皮脂の分泌が多いということが分かり、特に皮脂内の「不飽和脂肪酸」という成分が多い人は、毛穴が目立ちやすいということが明らかとなった。さらに研究が進むと、不飽和脂肪酸は肌の表面にある細胞に影響を与えることが分かり、これによって肌の細胞がカルシウムイオンという物質をたくさん取り込むようになり、これが肌の炎症を引き起こす。その結果、毛穴周りの肌のターンオーバーの乱れに繋がることで、毛穴周りの角質層が不安定化。最終的に毛穴がすり鉢状に開いたように目立つというメカニズムを引き起こすことが明らかとなった。(4)

皮脂自体は悪では無く、問題は皮脂の質

皮脂の過剰分泌によって様々な弊害が勃発することで、私たちは皮脂を無くそうと洗顔や除去に力を入れすぎる傾向にある。

皮脂は悪影響のみならず、

  • 皮脂膜を形成することで水分蒸発を防ぎ、外部の刺激から肌を守るバリアとして機能(5)

  • 皮脂にはトリグリセリド、スクワレン、ワックスエステルなどの成分が含まれおり、肌の水分を保持。特にスクワレンは、皮膚に柔軟性を与え、乾燥から守る(6)

  • 皮脂は皮膚のpHを酸性に保つ働きがあり、この酸性の環境が病原菌の繁殖を抑制し、肌の自然な保湿因子(NMF)の働きをサポート、肌の水分バランスを維持することにも繋がる

といったような、皮脂は悪影響のみならず、健やかな肌を保つ効果も担う重要な物質でもある。逆に皮脂を取り去ることに躍起になり過ぎると、肌のバリア機能が崩れてターンオーバーの乱れにつながり結果的に肌荒れやニキビ、角栓形成に繋がる可能性も無きにしも非ず。

数々の研究を元にすると、どうやら皮脂自体が悪者では無く皮脂が活性酸素と結びつき酸化してしまうことで、天然の保湿剤であるはずの皮脂が肌に悪影響を与える酸化物質に変化してしまうことにあるようだ。

以上のことから、私たちが皮脂に対して取り組むべきは「皮脂の分泌を抑制させる」「皮脂の酸化を防ぐ」ということに尽きる。皮脂を無くすのではなく、コントロールし、皮脂の質を落とさないが鍵。

スキンケアにおける皮脂抑制効果のある成分5選

ここでは皮脂抑制効果を持つ成分の中でも、特にエビデンスが豊富である成分をピックアップ。それぞれの皮脂に対するメカニズムや効果について解説する。

レチノイド

レチノイドはビタミンAの一種で、レチノールやレチノール誘導体、トレチノイン酸などレチノール成分の総称を指す。(過去記事に詳しく説明しています)

皮脂腺の細胞には、レチノイン酸受容体(RAR)とレチノイドX受容体(RXR)という特別な「受容体」があり、これらがレチノイドと結びついて、細胞の活動を調節。結果的にターンオーバーを促進させコラーゲンの生成を促し、ハリ弾力を付与するなど様々な効果が得られるプロセスの一種。

ある研究では、いくつかのレチノイドの組み合わせで、皮脂腺の細胞が増えるのを抑えたり、皮脂を作るのを妨げたりすることが分かっている。(7)

ライスパワーNo.6

ライスパワーと呼ばれるコメ発酵エキスの中でも、ライスパワーNo.6という成分は、皮脂腺の効果に作用し皮脂腺細胞の脂質合成を低下させることによって過剰な皮脂分泌を抑制。2015年に厚生労働省がその効果を認めた医薬部外品の新規有効成分として初めて「皮脂分泌の抑制」というカテゴリがこのライスパワーNo.6によって誕生した。(8)

アゼライン酸

皮脂の分泌には「5α-リダクターゼ」という酵素が関わっており、この酵素が「テストステロン」という男性ホルモンを変化させることで皮脂の分泌を促す。アゼライン酸は、この5α-リダクターゼを抑える特徴を持つことから、皮脂の分泌を抑制する効果があるとされ、ある研究(16)でも、

19~25歳の女性27名が、顔に20%アゼライン酸溶液を塗布する6回の治療を受けたところ、皮脂レベルの平均値は減少傾向を示したという結果が明らかとなっている。

  • 額の結果は、治療前は195.5、最後の治療から2週間後は162.7

  • 右頬の測定値は 175.3 から 141.3 に減少

  • 研究の 3 か月後に行われた測定値は、額で 151.3、頬で 138.9 

以上のことから、20%アゼライン酸の使用は皮脂腺の働きを10%~15%下げ、長期的な皮脂抑制作用を示し、新しいニキビ病変の形成を抑制に繋がるという結果が出ている。

チャ葉エキス

チャ葉エキスの皮脂抑制メカニズムもアゼライン酸と共通して、皮脂の分泌に関わる「5α-リダクターゼ」という酵素を抑える特徴を持つことから、皮脂の分泌を抑制する効果があるとされ、チャ葉エキスを含むクリームを使った実験では、肌のテカリやニキビが改善されたことが確認されている。(9)

グリチルレチン酸

グリチルレチン酸もチャ葉エキスと同じメカニズムで「テストステロン」という男性ホルモンを変化させることで皮脂の分泌を促す5α-リダクターゼを抑える特徴を持つことから、皮脂の分泌を抑制する効果があるとされ、2020年に行われた実験で、0.1%グリチルレチン酸を使ったところ、皮脂が減少することが確認された。

スキンケアにおける皮脂酸化抑制効果のある成分4選

ここでは皮脂の酸化を抑制する過酸化脂質抑制効果を持つ成分の中でも、特にエビデンスが豊富である成分をピックアップ。それぞれの皮脂に対するメカニズムや効果について解説する。

アスコルビルリン酸Na(ビタミンC誘導体)

ビタミンC誘導体の一種であるアスコルビルリン酸Naは、過酸化脂質抑制効果という「皮脂の酸化を防ぐ」効果を持つ。

実際に20名の被検者に1%アスコルビルリン酸Na配合乳化剤あるいはプラセボ乳化剤を1日2回7日間にわたって塗布した後、UVA(10J/c㎡)を照射し、皮膚表層から抽出したスクワレン過酸化物を測定したところ、1%アスコルビルリン酸Na配合乳化剤を塗布した場合では、過酸化物の生成を30%抑制し、また、1%アスコルビルリン酸Naと1%酢酸トコフェロールを併用することにより過酸化物の生成を40%も抑制したという研究結果が出ている(10)。

カフェイン酸・フェルラ酸

カフェイン酸・フェルラ酸は、紫外線を浴びることで皮膚に生成された、酸化した皮脂である過酸化脂質や一酸化窒素の生成を抑える効果があることが研究で確認されている(11)。

人を対象にした実験でも、カフェイン酸・フェルラ酸を塗った皮膚では、紫外線による赤みが抑えられることが確認さており、これらが皮膚の酸化ストレスを減らす抗酸化作用を持っていることが明らかになっている(12)

要するに、カフェイン酸・フェルラ酸が紫外線から皮膚を守ることで、過酸化脂質や一酸化窒素の生成を抑え、結果的にシミや老化を防ぐ効果が期待できる。

アゼライン酸

アゼライン酸は、角化異常抑制作用により毛穴の詰まりを防いだり、皮脂分泌抑制、抗菌活性、抗炎症作用など、ニキビや皮脂の過剰分泌による肌トラブルに対してさまざまな効果持つ成分の一種(13)。

また、20%アゼライン酸含有の低刺激性の製剤が開発され、新しい薬や治療法が本当に効果があるかどうかを他の変数を排除して厳密に確認するための方法かつ科学的に最も信頼性が高い方法と言われる「ランダム化比較試験」で有効性と安全性が確認されている(14)。

酢酸トコフェロール(ビタミンE誘導体)

酢酸トコフェロールの主な皮脂酸化抑制効果のメカニズムは、紫外線によって発生する一重項酸素やヒドロキシルラジカルといったフリーラジカル(活性酸素種)と反応し、中和反応によって、フリーラジカルが皮脂の成分にダメージを与える前に、その作用を抑えることができるというもの。

2001年にBASFジャパンテクニカルセンターによるヒト表皮細胞を用いた実験では、各濃度の酢酸トコフェロールを7日間培養後に活性酸素の一種である過酸化水素を使って酸化がどの程度抑えられるかを測定。結果、30μmol/Lの酢酸トコフェロールを使用した場合、酸化抑制率は10%。また、ビタミンCの一種であるアスコルビルリン酸Naと併用すると、さらに高い酸化抑制効果が得られることが明らかとなった。(15)

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