私たちは美白ケアにどこまで求めるべきか(2)

美白ケアに貢献する美白有効成分たちが、どれぐらいの期間でどの程度の効果を発揮しているのか。公開された臨床データを元に解説&それぞれの具体的な推奨アイテムについてもご紹介。
ななな 2025.02.19
サポートメンバー限定

シミが出来るメカニズムは何通りも存在し、シミに効くという美白有効成分はシミが出来る何通りものメカニズムのほんの一部にアプローチするのがその実態であるということを前編で紹介した。

よって、シワ改善よりも難しく複雑であるのが美白効果であり、成分毎のメカニズムやシミの深さもそれぞれ異なる為に、定量的にどっちが効果が高いか検証するのが難しいのが美白成分の難しさでもある。美白ケアは今のシミを消す作業ではない、今あるシミは自然の摂理であるターンオーバーを日々のケアにて促進することでメラニンの排出を重ね、次にできるであろうシミ予防の蓄積の末に徐々にシミや色ムラの目立ちにくい肌へと整えるというのが美白ケアの本質である。

まずこれを理解し、次に私たちが何を選ぶべきか。現在、美白有効成分として承認されているものは全21種。本記事ではその中から代表的な美白有効成分をピックアップし、今週・来週と分けて各成分について実際の臨床データに基づきながら有用性を深く深く解説。単なるパッケージのキャッチコピーでは分からない本質的な情報を掘り下げながら、推奨スキンケアアイテムについてもご紹介したい。

***

買わなくていいもの。やらなくていいものでは、おすすめ!ばかりで溢れかえる美容情報の中で日々、取捨選択に手を焼く私たちが自分のお肌に本当に必要もの・不必要なものを棲み分け最終的に自分のお肌に合った化粧品に辿り着けるよう、自身の経験と成分知識を元に、逆に買わなくていいもの。やらなくていいこと・に焦点を当てた記事をお届けしています。

SNSよりもクローズドな空間だからこそお伝えできるリアルな情報を受け取るにはぜひサポートメンバー登録をご検討ください。

***

スキンケアで改善できる美白成分の事例と限界 

美白ケアには一定の効果が期待できるが、その限界も理解しておく必要がある。

適切なスキンケアを継続することで、シミやくすみの軽減、肌のトーンアップといった改善が見込めるが、すべての色素沈着を完全に除去できるわけではない。本稿では、美白有効成分を含むスキンケアアイテムを使用した具体的な改善事例を紹介しつつ、スキンケアによる美白の可能性とその限界について考察する。

グリチルレチン酸ステアリルSW

2023年にコーセー独自の美白有効成分として「肌あれ・あれ性」と「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」といった2つの効能を有する成分として承認された、比較的新しい美白有効成分がグリチルレチン酸ステアリルSWである。美白のメカニズムは、「私たちは美白ケアにどこまで求めるべきか(1)」でも記載したように、

  • シミの元となるメラニンを作るメラノサイトを活性化する物質:プロスタグランジンE2(PGE2)を抑制

することで、結果的にメラノサイトの活性化を防ぐ。そしてメラニンの生成を抑える効果を有する(1)。

KOSE

KOSE

  • グリチルレチン酸ステアリルSWを配合した化粧水をシミに悩む実験参加者30名に12週間連続使用

試験開始時と連用後の肌やシミの色の変化や透明感を評価すると、肌の赤み・色むらが減少し、明るさ・透明感が有意に改善したという結果が出ている。

個人的な主観では、シミ・色ムラが完全に消えた、というよりも赤みが減ったことで肌トーンが少し均一化したように見える程度。だがあくまでも12週間での結果である為、さらに継続することでもっと肌トーンが均一化される可能性は見込める。

グリチルレチン酸ステアリルSW配合推奨アイテム

雪肌精

雪肌精

現時点でグリチルレチン酸ステアリルSWが配合されているのは雪肌精シリーズのみ。臨床試験では化粧水を使用していることから、試すなら化粧水で良い。推奨期間はまずは12週間。効果の有無を実感できるのは、早くても2本を3か月で使い切ってから。

未だ比較的新しい成分であることと、肌荒れ効果にも優れるという点からすると、シミが深刻・美白効果の強さや即効性を重視するという目的よりも、くすみや赤みが気になる、肌荒れをおこしやすいゆらぎ肌向け。肌のコンディションを整えながら、ぎなぎなシミ対策ができればいいかなという方に推奨。

PCE-DP(デクスパンテノールW)

従来の美白成分は 「メラニンの生成を抑える」 ことが中心であった。しかし、2018年に承認を得たポーラの新美白有効成分PCE-DP(デクスパンテノールW)は、 「メラニンの蓄積を抑える」 という全く新しい発想で開発された。

この成分は、表皮細胞のエネルギー産生を高めターンオーバーを促進することで、メラニンが肌にたまりにくくし、シミやそばかすを防ぐという独自のアプローチを採用。美白ケアの新たな可能性を切り開く成分として注目されてる話題作。

ポーラ化成

ポーラ化成

日本人男女31名を対象に、紫外線でできた色素沈着部分に 有効成分入りの製剤 と有効成分なしのクリーム(プラセボ) を28日間塗布して比較。

その結果、有効成分入りの製剤を使った方が、シミの色が薄くなる効果が統計的に証明された(2)。ターンオーバーを促進することにより表皮に溜まったメラニンをどんどん排出する流れを絶やさない、ということから確かに継続によって肌の小さなシミやくすみがクリアになっていることが分かる。それと同時に、ターンオーバー促進作用によって皮膚表面のキメも徐々に細かく滑らかになっているように思える。

PCE-DP(デクスパンテノールW)配合推奨アイテム

アドバンスド ブライトニング セラム

アドバンスド ブライトニング セラム

デクスパンテノールW配合アイテムと言えばポーラのホワイトショットが有名なのであるが、ポーラだけに価格がやや高額。個人的にお試し用として推奨すべきは、同じポーラ化成の傘下ブランドであるオルビスのアドバンスド ブライトニング セラム。36ml 4,950円と試しやすい価格帯ということから推奨。

臨床データにおいては3か月から効果が出始める為、朝晩使用で月1本、計3本は使用してみないとその効果は判断できない。

また、デクスパンテノールWはあくまでも、今肌に存在するメラニンを外に排出する効果によって透明度の高い肌を目指す目論見。これから浴びるであろうメラニンの生成を抑制する効果は無い。個人的にはこれ単独、というよりかはメラニン抑制効果のあるその他の美白有効成分との組み合わせを推奨したい。

コウジ酸

コウジ酸は、創業1887年の老舗メーカーである三省製薬によって開発され、1988年に「チロシナーゼという酵素の働きを阻害することでメラニンの生成を抑制する」美白有効成分として承認された成分である。チロシナーゼは、メラニンの産生を促す重要な酵素であり、その活性を抑えることでシミやくすみの発生を防ぐ。また、それだけでなくシミを防ぐ美白効果に加えて、肌の黄ぐすみの原因となる「糖化」を抑える力もあり、肌を明るくする効果が実験で確認されている。

日光黒子(長年の紫外線ダメージによって生じるシミ)または、肝斑(ホルモンバランスの影響等で発生するシミ)、またはその両方の色素沈着症患者計25名に、株式会社コーセー提供の1%コウジ酸 + 0.1%油溶性甘草エキス配合エッセンスを1日2回、顔全体に適量を塗布(10週間以上)した2000年の実験では、

皮 膚 ・第42巻 ・第6号 ・2000年12月

皮 膚 ・第42巻 ・第6号 ・2000年12月

  • 日光黒子の患者22名のうち20名が「やや有効」以上の改善を確認

  • 肝斑の患者8名全員が「やや有効」以上の改善を確認

  • 副作用は1例も報告されず、安全性が高いことが確認

  • 「極めて有用」と評価された患者では、治療前と比べて肌の明るさが平均4.86ポイントアップし、最も大きな改善が見られた

  • 自己評価では40%(10名)が「非常によくなった」、48%(12名)が「よくなった」と回答

  • 10週間未満の短期間で大きな改善が認められた症例も存在

という良好な臨床試験データが存在する(3)。この実験の肝は、コウジ酸と同様に「チロシナーゼという酵素の働きを阻害することでメラニンの生成を抑制する」0.1%油溶性甘草エキスが併せて配合されていることから、さらに美白効果が高まっているという点。

三省製薬

三省製薬

三省製薬の研究でコウジ酸のみを配合したものは、0.1%油溶性甘草エキス添加実験で10週間で効果が現れたのに対し、約10ヵ月を要している(4)。

コウジ酸は、長年の実績があり、現在も信頼性の高い美白成分のひとつとして広く使用されている。例えば、KOSEの「ONE BY KOSE メラノショット W」は、コウジ酸を有効成分とする代表的な美白美容液のひとつ。また、開発側である三省製薬自身も「デルメッド」というブランドを展開し、コウジ酸の効果を最大限に活かしたスキンケア製品を提供している。

コウジ酸配合推奨アイテム

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、2682文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

読者限定
エタノールは本当に悪か。
サポートメンバー限定
無知は悲劇。実は要らないコスメ・美容器具リスト
サポートメンバー限定
【質問】Anuaの美容液は買い?成分はどう?効果ある?
サポートメンバー限定
私たちは美白ケアにどこまで求めるべきか(3)
サポートメンバー限定
私たちは美白ケアにどこまで求めるべきか(1)
サポートメンバー限定
【質問】ニキビ対策にビタミンBサプリはどう?インナーケアどうする
サポートメンバー限定
私たちはシワ改善にどこまで求めるべきか
サポートメンバー限定
私たちはスキンケアにどこまで求めるべきか