自分に褒美を。私的ベスコス上半期TOP10【前編】

美容雑誌を捲ると、年がら年中目にするベスコス特集。「ベストコスメ」は、コスメブランドの販売戦略として使われることが増えたせいか、その価値が少しずつ薄れてきているように最近感じる。
そうした背景もありつつ、気づけば今年も年の節目となる6月に突入した。個人的には、すでに何度もリピートしている“お決まりコスメ”がいくつかあるので、正直新しいアイテムを迎える余力はあまり無い。気に入ったものをずっと使い続けるのもいいが、年齢とともに変化していく肌状態や、年々進化する高機能なスキンケアの存在を考えると、何もしない「現状維持」は実のところ、少しずつ右肩下がりになるやも知れず。 だからこそ、新しいものを取り入れながらスタメンコスメはアップデートを図るべきではないだろうか。
今回は、2025年に新しく発売されたもの・私自身がこの上半期に初めて手に取ったプロダクトの中から、スタメン入りすることとなった新作コスメをピックアップ。スキンケア、ベースメイク、ポイントメイクなど各カテゴリごとに“私的ベストワン”を選出する。
買わなくていいもの。やらなくていいものでは、おすすめ!ばかりで溢れかえる美容情報の中で日々、取捨選択に手を焼く私たちが自分のお肌に本当に必要もの・不必要なものを棲み分け最終的に自分のお肌に合った化粧品に辿り着けるよう、自身の経験と成分知識を元に、逆に買わなくていいもの。やらなくていいこと・に焦点を当てた記事をお届けしています。
SNSよりもクローズドな空間だからこそお伝えできるリアルな情報を受け取るにはぜひサポートメンバー登録をご検討ください!

アクアレーベル エステ洗顔ジェル
スキンケアにおいて、最も困難を極めているのが毛穴悩み。その中とりわけ悩ましいのが角栓問題である。自身も散々過去これまでに綴ってきたが、角栓は無理に取り除くことで毛穴周りの皮膚にダメージを与え、肌の生まれ変わりのサイクルであるターンオーバーが乱れやすくなることから、結果的に角栓ができやすくなる負の連鎖を招く恐れがある。(過去記事:毛穴詰まりに酵素洗顔は本当に有効か?)

このことから、角栓は単に取り除くだけではなく肌ダメージを最小限留めることが大前提。これまでは角栓ケア=スクラブやピーリング・酵素洗顔でこそぎ取るといった手段が主流であったが肌へのダメージが伴う悪習にも。もうこの時代はとうの昔。
近年では、2021年に花王が角栓を物理的に取り除くのではなく自ら崩壊させて排出を狙うという洗浄技術(1)を開発、2023年にはKOSEが量子コンピュータを用いた化粧品の最適な処方を自動生成する技術を開発し、角栓除去に優れたクレンジングオイルへの応用にも成功している(2)。
毛穴ケア市場において「角栓対策」は長らく、各社が技術開発を競い合ってきた領域である。そこで今回資生堂アクアレーベルが打ち出したのは、「温泉のpHに着目した角栓分解処方」という、先端技術とは異なる自然由来の知見を活かした、ユニークかつ新しいアプローチであった。

出典:ひがしね温泉
温泉といえば“肌がつるつる”といったイメージがあるが、その秘密の一つがpHバランスにある。多くの温泉は弱酸性〜弱アルカリ性で、肌にやさしく、皮脂や角栓を自然にゆるめる作用を持ち合わせている。アクアレーベルはこの性質に着目し、角栓を壊さず、脂質部分だけをゆるやかに溶かす処方を実現。その鍵となるのが、脂肪分解酵素「リパーゼ」。角栓の主成分・脂質を狙って分解することから、威力は弱いがスクラブやピーリングのように肌全体に負担をかけることが無い。
洗浄成分にはアミノ酸系洗浄成分「ココイルメチルタウリンNa」を採用。肌へのやさしさと洗浄力のバランスに優れ、つっぱり感を抑えつつもしっかり皮脂汚れを落とす構成に。この2つの成分の組み合わせにより、力任せに角栓をこそぎ取るようなこれまでのケアから毎日の使用で角栓を少しずつほぐしながら排出を助けるという効率的かつ肌負担の生じにくい毛穴ケアが可能になった。
角栓は脂質とタンパク質が絡み合った塊であり、無理に取り除けば肌も傷つけてしまう。 だがこの「角栓分解ジェル」は、pH設計により脂質だけをやさしくほぐし、肌への負担を最小限に抑えながら、継続使用で角栓の排出と予防を同時に叶える処方となっている。
メイク落とし兼洗顔料という設計も、日々のスキンケアに自然と取り入れやすいポイント。だが一点注意したいのが、メイク落としと言えどウォータープルーフのポイントメイクや酸化亜鉛配合の皮脂崩れに強いベースメイクなど相性によっては落としにくいものも多い。あくまでも酸化亜鉛フリーの軽い日焼け止めを落とす程度の洗浄力であることは留意してほしい。
まとめると、この洗顔ジェルは、時短や流行に流されたアイテムではなく、肌研究を続けてきたブランドが、「本当に必要な毛穴ケアとは何か」を問い直し、日常に根づく処方へとたどり着いた結果なのである。